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最高裁判所第一小法廷 昭和45年(オ)935号 判決

上告人

多摩宝石株式会社

右代表者清算人

上山八郎

代理人

斎藤竜太郎

杉山博

被上告人

大和人造貴石株式会社

主文

本件上告を棄却する。

上告費用は上告人の負担とする。

理由

上告代理人斎藤竜太郎、同杉山博の上告理由について。

第一審判決添付目録記載の各書類は商法二七五条(同法四三〇条二項により準用される場合を含む。以下同じ。)、二八一条、四一九条または四二〇条のいずれかの定めるところに該当する書類であり(本件訴訟の経緯に鑑みれば、同目録一記載の書類のうち。昭和四三年七月一日から昭和四四年六月三〇日までの年度分に関する損益計算書、ならびに、準備金および利益または利息の配当に関する議案は、被上告人の本訴請求の対象から除外されていることが記録上明らかである。)、したがつて、株式会社の取締役(清算中は清算人。以下同じ。)は、同法二八二条(同法四三〇条二項により準用される場合を含む。以下同じ。)の規定により、右書類を会社の本店に備え置かなければならない。

ところで、同法二九三条ノ五(同法四三〇条二項により準用される場合を含む。)の規定によれば、取締役は同法二八一条に掲げる書類の附属明細書を会社に備え置くことを要するところ、この規定と対比するときは、取締役は、同法二八二条の規定の類推適用により、右附属明細書の基本書類というべき同法二七五条、二八一条または四二〇条所定の各書類を、定時総会終了後も、会社の本店に備え置く義務があると解するのを相当とする。また、右書類と同種の書類である同法四一九条所定の書類についても同法四三〇条二項により同法二八二条の規定が準用されるのであるから、清算人はこの書類を株主総会終了後も本店に備え置く義務があるものと解すべきである。そして、会社債権者は、その債権の一般担保である会社財産の状況について重要な利害関係を有するものであるから、株主総会終了後においても右財産の状況の概要を知りうる状態におかれる必要が存するのであつて、特段の事情のないかぎり、株主総会終了後も、商法二八二条二項の定めるところに従い、会社に対し、前示の各書類を閲覧しまたはその謄本もしくは抄本の交付を請求することができるものと解するのが相当である。

したがつて、右と同旨の見解のもとに被上告人の本訴請求を認容した原審の判断は、正当として是認することができる。原判決に所論の違法はなく、論旨は採用することができない。

よつて、民訴法四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員の一致で、主文のとおり判決する。(下田武三 岩田誠 大隅健一郎 藤林益三 岸盛一)

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